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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside

そのまま唖然とし続け、此方を不審そうに睨み付けてくる黒いライムスの口内へと舌を乱暴に捩じ込むサン。 【んんっ…………んむっ……!!?】 サンが強引に口を塞いでいるせいで息が出来ない苦しさから、黒いライムスが思わず苦悶の声をあげる。しかし、サンはといえば――そんな黒いライムスの事などお構いなしに、そのまま自らの舌で口内を蹂躙する。 グニャッ………… ふと、サンの舌の先端にグニャッとした気持ち悪い物が当たった。それは、サンの舌が当たった途端――パニックに陥ったかのように黒いライムスの口内で暴れ始めた。 それが、ライムスの頭と体を支配しようと企んでいる忌々しいドッペル虫の本体だと確信したサンはグニャ、グニャとしたドッペル虫の本体の気持ち悪い感触からくる生理的嫌悪感を必死で耐えた。 そして、そのまま舌を引っ込むような事はせずにジッと根気よく、ある瞬間を待った。 チクッ――!! この瞬間を待っていた―――。 ドッペル虫の注射針のように尖った先端部分がサンの舌へと食らいつくのを――ずっと待っていたのだ。 ドッペル虫は一度、獲物に食らいついてしまうと少しの間は、その箇所から離れない。それこそ、注射針のように体内で自ら分泌する媚薬に似た成分のヌリュッとした液体を獲物の体内へと注入し獲物をメロメロにしてから肉体と頭への支配を開始するのだ。 ドッペル虫の性質の情報を前もってミストから聞いていて良かった、とサンは心の底から仲間へと感謝した。 『――ドッペル虫に食らいつかれたら、時間勝負なんだよ。媚薬に似た成分の液体のせいで徐々に正気を失っていってしまうから。でも、それさえ気を付ければ大丈夫。ドッペル虫は――厄介だけど、実はとても脆いんだよ……この意味、分かる?』 ―――早く、早く黒いライムスの口内から舌を引き抜かなくては。 ズリュッ…… 思ったとおり、黒いライムスの口内から引き抜かれたサンの舌先に普通の虫よりも数倍は長くて先端が尖った異様な見た目のドッペル虫の本体がぶら下がっていた。 そして、サンは余りの気持ち悪さに鳥肌がたちつつ、尚も舌にくっついているドッペル虫を引き剥がすために己の手で本体の尻尾を持ちグイッと引っ張ってみた。 しかし、なかなか引き剥がせない――。 強引に引き剥がそうものなら、とてつもない痛みが舌中に走る。それどころか、床下がサンの舌からポタポタと滴りおちる赤い血で汚れてしまう。 【ギィッ………ミギィッ……ギギィッ………!!】 どうにかして、サンの肉体と脳を己の支配下に置こうとドッペル虫が醜く甲高い不快な鳴き声をあげるのだった。

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