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【笛吹男】と【ピエロ的ゾンビ男】とミラーハウス ※サン・ガルフ・ライムスside

床下に落ちたドッペル虫の本体を弓矢で突き刺した事により、ろくな抵抗も出来ぬまま奴は、がむしゃらに暴れ続ける。 【ギィッ……ミギィッ……ギィィィィーッ…………】 ――ズシン、 ――ズシン、ズシン そのドッペル虫の不快な叫び声に反応しているのか、少し遠くの方からドラゴンのものらしき足音が聞こえてくる。 おそらく、このドラゴンはドッペル虫の声によって行動自体をコントロールされ、更に命令を受けると半ば強引に行動をしているのだろう。 つまり、声という曖昧な方法だけでしかドッペル虫の状況を理解しえないドラゴンは――ドッペル虫の本体が窮地に陥っているとは思ってもいないはず――。 そして、ドラゴンがドッペル虫の声を合図としているというのなら―――おそらく、まだサンを攻撃してこようとするはずだ。 そう考えたサンは、弓矢によって張り付け状態にされてジタバタと暴れているドッペル虫の側へ、わざと近寄った。 ―――ヒュッ…… 鏡の中に映るドラゴンの黒い腕らしきものが上へと振り上げられたのを穴が開く程にジッと見つめ続けていたサンが――見逃す筈もなかった。 ――ザシュッ……!! 鋭い白銀の爪が、サンの体ではなく――無様に床に張り付けられ苦し気に悶えて暴れ回っていたドッペル虫の本体を無情にも切り裂いたのだ。 【ギッ………ギィッ……ギァァァァーッ……!!】 部屋中がビリビリと震動しそうなくらいの不協和音をドッペル虫が発すると――そのままサンと気絶しているライムスの前をグルリと囲んでいる鏡に異変が起きるのだった。

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