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【笛吹男】と異形なる者達のパレード
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まだ少し離れた方角から軽快な楽器の音が聞こえてくる。
しかし、ヤツラは一体何を企んでいるのか、と物陰に隠れつつ慎重に移動しているサンは不思議に思った。
ヤツラにとって敵であるサンとライムスには出来るだけ気付かれないように此方の動向を伺い知れるのが―――普通ではないのか?
あのように軽快な楽器の音を響かせながら足音までさせて此方に向かってくるなど――自分達の存在をサン達にアピールしているといっても過言ではないのではないか?
と、そのようにサンが不審に思っているとふいに両腕に抱かれているライムスがピョンッとサンの腕から勢いよく飛び出して、そのまま恐れも抱かずに前方へと跳ねるように移動し始めた。
「お………おいっ……ライムス、お前……何をしている!?ヤツラが来たら……どうするつもりだっ!?」
「でも、美味しそう……美味しそうデス……美味しそうな……いい匂い……何の香りデスか?」
―――フワッ……
その途端、辺りには――まるでパンを焼いたかのように香ばしい香りがサンとライムスの鼻を刺激してきた。スライムにも嗅覚があるのか、と呑気な事を思ったサンだったが――それも、ライムスが正気を失ってしまったかのように物凄いスピードで廊下をどんどんと進んで行くのを見て全て吹き飛んでしまい、慌ててライムスを追いかける。
――クシャッ……
どのくらいライムスを追いかけたのだろうか。
サンは己が何か柔らかい物を踏んでいる事に気付き、ライムスを追いかけつつも――足元に目線を移した。
それは、まるで――パン屑のような見た目で柔らかい白い綿だったのだ。
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