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【ピエロ的ゾンビ男】と【笛吹男の子供たち】との会話
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狂暴化したガルフとサン達が対面する少し前のこと―――。
【ねえ、ピエロのお兄ちゃん――ピエロお兄ちゃんったら、やっと来た!!あのね、みてみて!!ワタシの中身を少し床に落としてヤツラを誘き出そうと思うんだけど、どうかな?前の世界で見た絵本を見て考えたの!!】
かつて、猫とニンゲンだった女の子が愉快げに微笑みながら【ピエロ的ゾンビ男】へと弾むような声で尋ねた。
【――ダディは何て言っているの?ダディの言葉に従うよ。ダディのお願いが一番だから――】
【パパは好きにしていいって言って、パレードから外れちゃったわ。他の所に行っちゃった。それにしても、ピエロのお兄ちゃんったら――少しは自分の願いってないの?パパのお願いを聞きたいっていうピエロのお兄ちゃんの言葉も分かるけれど――それよりもワタシ……ううん、ワタシと弟は――ピエロのお兄ちゃんのお願いも聞きたいの。だってワタシ達――大事な家族だもん!!】
―――自分の願い。
―――家族。
その二つの言葉は【ピエロ的ゾンビ男】にとって久し振りに聞いた言葉だった。
自分の願いなど――まして、前の世界の家族の事など……とうに忘れていた。
【ピエロ的ゾンビ男】にとって大事な事は全て【笛吹男】に関するものばかりだったから――。
―――【笛吹男】の命令に絶対に背かない。
―――【笛吹男】の歪んだ願望を受け入れ、その手伝いをする。
―――【笛吹男】からの普通ならば口に出すのも憚るような性的な行為を受け入れ、無償で壊れた自らの肉体を捧げる。
もはや【ピエロ的ゾンビ男】の意思など皆無に等しかった。だから、猫と合成された哀れな女の子の言葉がピンとこなく、首を傾げる事しか出来なかったのだ。
【―――ピエロのお兄ちゃんはワタシと弟に優しいから――どうしても叶えてあげたい。もしも、何かお願いがあるなら……っ……】
【じゃあ、ひとつお願いがあるんだ。もしも、お兄ちゃんが……ダディとひとつになりたいって――つまり、君たちのママになりたいって言ったら協力してくれるかい?何があっても――お兄ちゃんを――ダディが愛するママだと認めてくれる?】
【うん。何があっても――ワタシと弟はピエロのお兄ちゃんがママだって認めるわ――だって、ピエロのお兄ちゃんは大事な家族だもの!!】
【ピエロ的ゾンビ男】は、その言葉を聞いて――とても安心して、思わずニヤリと継ぎ接ぎだらけの口元をゆるめてしまうのだった。
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