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サンと【凶暴化したガルフ】

――ピタッ…… ライムスは、サンに着いていくか【ピエロ的ゾンビ男】の甘い言葉を受け入れるか葛藤しているらしく、今までウサギのようにピョンピョンと跳び跳ねていたにも関わらず――急に動きを止めて【ピエロ的ゾンビ男】がいる目前でサンの方へと振り返った。 その光景を目にしたサンは、ライムスを救うべく足早に【ピエロ的ゾンビ男】が立っている通路の先へと駆け寄ろうと試みた―――が、 【イビルアイ……っ……何をしている!?早くスライムのオチビちゃんを此方側へ取り込めっ――!!】 一際、大きな【ピエロ的ゾンビ男】の声が通路の辺りへと響いたかと思うと、彼が手に持っている赤・青・緑の風船の中央にそれぞれ――ニンゲンの目と鼻と口が現れたのだ。 ―――赤色の風船に出現した【目】は先程サンが鏡の間で出会った赤い邪悪なもので恐らく本体なのだろう。 ―――緑色の風船に出現した【鼻】はグニャリと曲がった醜悪な形をしていて、まるで腐っているかのような緑色をしており、ヒクヒクと動いている。 ―――青色の風船に出現した【口】は苦しみに耐えているかのように食い縛ったような形をしていて、まるで生気のない真っ青な色をしており【ピエロ的ゾンビ男】に何かを言いたげに微かに動いている。 【イビルアイ――何かを言いたげそうにしていても時間のムダだ!!早くダディのためにその可愛いスライムのオチビちゃんを捕まえろ――お前の目と口はただの飾りじゃないだろう?】 【…………】 ―――グニャ、グニャリ…… その【ピエロ的ゾンビ男】の苛立たしげな声が合図となった。【口】の緑の風船が、まるで突然意思を持ったかのように自然な動きで曲がったかと思うと――突然の異常事態に呆然と立ち尽くしているライムスの目前まで素早く移動してくるのだった。

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