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サンと【凶暴化したガルフ】との攻防

「うっ………ぐぅっ…………!!?」 と、サンは思わず顔を歪めつつ苦しげな声を出さずにいられなかった。 【目】の風船が――サンの目前まで迫ってきた後、自然と互いに目を合わせざる終えない状況になったのだが、そこまではまだ良かった。 しかし、サンは次第にとある異変に気付く ――。 体が内側から外側まで焼けるように熱くなっていくのだ。その異異様な熱さは、じわじわとサンの全身――果ては、血の中まで駆け巡ってくるような感覚に陥ってしまう。 しかし、奇妙な事にサンの体が実際に炎に包まれながら燃えている訳ではないのだ。その代わり――というのも変な事なのだが、風船の糸がギリギリと音をたてそうな程にサンの全身に絡み付いていた。 【それじゃあ、愉快で楽しいパレードを再開しよう。あとは可愛い可愛い弟が何とかしてくれる――頼んだよ?】 パチンッ――― 【笛吹男】が口元を歪ませながら笑みを浮かべて指を鳴らすと、そのまま【口】の風船が裂けてしまうのではないかと思う程にグワッと大きく開いた。しかし、ライムスは尚も【口】の風船の中へ捕らわれているままだ。 ―――ズォォォォッ~……… またしても、辺りに響き渡る奇妙な音が聞こえてきたかと思うと、次の瞬間――【口】と【鼻】の風船を持った【笛吹男】が――そのまま【口】の風船に勢いよく吸い込まれていくのがサンの目に映った。 ――フッ その途端、【目】の風船の攻撃により、全身を糸で絡められている事による苦しさと異様な熱さから――解放され、少しだけ安堵した。 しかし―――、 【グルルッ――グワァァァァッ――――!!!】 【目】の風船もいつの間にか姿を消していた事により、僅かに油断しきっていたサンを今度は【狂暴化したガルフ】が襲おうとしている、と――その獣じみた狂気に支配された凄まじい咆哮を耳にしてやっと気付いたサンは慌てて、かつては仲間だった存在の方へと振り向くのだった。

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