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サンと【凶暴化したガルフ】との攻防
(……あのガルフとやらの狼男もライムスと同じくドッペル虫にて操られている筈――しかし、ライムスの時は体が透明で内部に潜んでいると分かったため、すぐにドッペル虫への対処が出来たんだが……っ……)
―――ザッ
――ザシュッ!!
サンが少し余裕なさげな様子で考えていると、待ってましたと言わんばかりに【狂暴化したガルフ】は素早くサンの方へと移動し、容赦なく己の鋭く光る爪を彼の体を傷付けようと降り下ろしてきた。
ポタッ……
ポタ、ボタッ……
【狂暴化したガルフ】への対処方をどうしようか、と――その事ばかりが頭を駆け巡っていたサンは降り下ろされた爪からの攻撃を防ぎきる事が出来ずに咄嗟に体の前で構えた右腕を負傷してしまう。
そして、サンの右腕から流れた血が床を汚すのだ。
(このままでは、まずい……っ……早くガルフを操っているドッペル虫を探し出し、ライムスの時のように本体を始末しなくてはっ……)
(――しかし、どうやって!?狼男の体の外側にいるとしても奴の体は細い針金のような毛で覆われていてドッペル虫が潜むには格好の場所だ……紛れていては見分けがつかない……それに、体内に隠れられていたら――それこそ、お手上げだ)
色々な思いが、サンの心の中を駆け巡って支配する――。
(ミストのように捜索炎形魔法が使えれば――いや、私にだって捜索炎形魔法は使えないことはないが、あれほどの上級魔法を使えば……っ……私は己にとって大切な事を1つ忘れてしまう――その覚悟が、私に……あるのか?)
―――サンは心の中で葛藤する。
―――そして、彼は答えを出してギュッと拳を握った。
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