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サンと【凶暴化したガルフ】との攻防
《捜索炎形魔法》―――。
この魔法について勘違いする者も多いのだが、この魔法は単に何かを捜索するためだけに使用される訳ではない。そして、単に物や人を探すためだけに使用される単純な探索魔法とも訳が違う。
簡単にいえば――魔法を唱えた者が何か(物や人)を捜索したい時に己の血を媒介にして召喚魔物を呼び出し、願いを叶えてもらうというものだ。
しかし、まがりなりにも誰彼もがむやみやたらに使えないように禁術扱いされている上級魔法なので―――魔法を唱えた者は、それなりのリスクを背負う事になる。
《願いの度合いが大きければ大きい程に、魔法を唱えた者にとって大事な記憶を失う事。そして、その度合いを決めるのは魔法を唱えた者の元に召喚された魔物の判断次第であり―――魔法を唱えた者の意思で、後に失う事になる記憶を決められないという事―――》
「Ω&ΩΩΩ&&Χααα$$!!」
しかし、サンは険しい顔つきをしつつも――かつて、とある人から聞いていた《捜索炎形魔法》を発動させる為の呪文を唱えた。
すると――たちまち、サンの体が赤い炎に包まれていき先程攻撃されて出来た床の血溜まりが、サンの体に包まれた炎のせいで沸騰してしまっているかのようにボコボコと音を立てながら泡立った。
「いや~……これはこれは極楽じゃわい。なあ、わしを呼んだ耳長小僧よ……そうは思わんか?そうさの~……お主の血の湯のおかげで、体がみるみる内に元気になるわい。湯血場とは、よう言ったもんじゃの~…………どれ、お主の望み……わしに言うてみるがよい!!」
ふと、サンは己の右腕が負傷したせいで出来てしまった床の血溜まりがボコボコと音を立てながら泡立った後で――段々と人型へと姿を変えていった光景を目の当たりにし思わず息を呑んでしまったのだった。
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