302 / 713
サンと【凶暴化したガルフ】との攻防
《捜索炎形魔法》をサンが唱えた事によってボコボコと沸騰する血溜まりの中に出現した召喚魔物は――昔、とある人物から教わった通りの異様な姿をしていた。
肌の色はサンの血の色と同じく赤黒く、まるで温泉にで浸かっているかのようにボコボコと泡立っている血溜まりと同化していた。
髪の毛など存在しないツルツル頭のてっぺんには小さな二本の金色の角が生えている――。
奇妙な事に本来目があるべき場所には白い布がグルグル巻きにされており、金色の歯を覗かせながら口元だけがニヤリと笑っている――。
そして、口調は――ある人物から教わっていたダイイチキュウに存在している《老人》とやらのものに瓜二つだったのだ。
『―――ダイイチキュウはマコトやユウタ達が――このミラージュに戻ってくる前にいた世界の事だ。あの術師――ネコン・ヤマンが言っていた通りだったのか。』
「おやおや、お若いの。わしの力を信用しておらんのじゃな?よ~く分かるわい。まあ、よいよい――お主の望みを言ってみよ?」
「私の…………私の望みは……っ……!!」
サンは一瞬、躊躇してしまう――。
そして、その僅かな隙を狙ったかのように――再び、【狂暴化したガルフ】が憎悪を露にしつつサンへと襲いかかろうとした。
―――ドガッ!!
――ザシュッ
「ぐっ…………ううっ……!!」
僅かな隙を狙われ、防御が間に合わず――サンは【狂暴化したガルフ】の蹴りの攻撃をマトモに喰らってしまう。手の爪だけでなく、足の爪までもが鋭く尖った【狂暴化したガルフ】の蹴りを喰らってしまったためサンの腹には三本の鋭い引っ掻き傷が出来てしまったのだった。
ともだちにシェアしよう!