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~サンの【赤いひとつ目の風船】~

―――だが、 【おいおい、せっかく俺がアイツらの居場所を教えてやろうと思ったのに……てめえは、そのチャンスを台無しにするつもりか?】 「黙れっ……!!」 その【赤いひとつ目の風船】――正確には【イビルアイ】の言葉を聞いたサンは悔しげな表情を浮かべるものの、確かにこれからの道標となりそうなチャンスを無駄にする事は愚かな行為だ、と思い直し――そのまま【イビルアイ】へ文句を言おうとしたのをグッと堪えた。 【…………ふん、俺を信用出来ないって顔をしているな?まあ、確かにてめえの言いたい事も分かるさ……だが、俺よりもてめえに会いたがっている奴がいるんだ。俺にしたって、てめえに来て貰わねえと困るんだよ】 【イビルアイ】が――ひとつ目を閉じて呆れたかのような口調でサンへと呟く。いや、呆れただけではなく、どことなく悲しげな口調も混じっているような気がした。 「あの【笛吹男】とかいう、ふざけた奴が――私を連れてこいと命令したのか?」 【いいや、違うね――。俺は、あんなイカれた野郎の【笛吹男】の命令なんざ聞かねえよ。俺が命令を聞いてやる奴は――ただ一人。笛木の野郎に対する歪んだ【愛】に支配され、未だにもがいているバカなピエロで俺の元教え子の【安達 夢々】――アイツだけだ。いいから、とっとと着いてこい】 ―――ふわ、 ――ふわ、ふわり………… そう言いながら【イビルアイ】が、ゆっくりと移動し始めたため今いち納得出来ないサンだったが、ここで立ち止まる訳にはいかないと思い直し――そのまま、渋々と【赤いひとつ目の風船】の後に着いていくのだった。

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