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~サンと【イビルアイ】――それに【共依存ビ男】
―――ピョンッ!!
ふいに、かつて【ピエロ的ゾンビ男】だった半身が【イビルアイ】には何も言わず、ゆっくりとサンに向かって歩み寄ってくると、そのまま手を前に差し出してきた。
そこには――ライムスが乗っており、そのまま元気よくサンへと飛び付いてきたのだ。
「サン様……良かったデス……やっと会えました!!」
「…………」
勢いよく飛び付いてきたライムスを上手くキャッチしたものの、サンは何も言わずに嬉しそうにはしゃいでいるライムスの様子をジッと見つめたまま首を傾げる。
勢いよく飛び付いてきたライムスを上手くキャッチしたものの、サンは何も言わずに嬉しそうにはしゃいでいるライムスの様子をジッと見つめたまま首を傾げる。
「…………サン、様……?」
「お前は……誰だ?いや、ヒキタの連れだったのは分かる……だが、名前が……っ……」
神妙そうな顔つきで己を見つめてくるサンの反応にライムスはかなりのショックを受けた。だが、すぐに気を取り直すと――そのまま、人型となりサンの頬に軽く口付けし、そして――、
「ラ、いいえ――ぐにゃぐにゃデス。これからは、そう呼んで下さい!!」
「ぐにゃぐにゃ……変な名前だな。だが、嫌いではない――」
思わず吹き出してしまうサンを見て、ライムスもつられて嬉しそうにギュッと彼に抱き付いてしまうのだった。
【おいおい、てめえら――イチャついてる場合じゃない。夢々ちゃんはともかくとしても――まだ、女みたいに執念深い野郎が、てめえらに危害を加えようとしているぜ!?】
その【イビルアイ】の言葉を聞いたサンはハッと我に帰り【共依存ビ男】の、かつては【笛吹男】だった半身へと目を向ける。すると、その半身も手に何かを乗せている事に気付いた。
―――黒い鳥だ。そして、三本足のその鳥は何かを足で掴んでいるようだ。
【野郎―――まさか、ヤタガラスを使ってまで執念深く俺らを始末するつもりか?やばい、早く耳を塞げっ……!!あの足で掴んでいるのは……奴が以前の世界から持ち込んだ特殊な笛だ。まともに音を聞き続けていると正気じゃいられなくなるぞ!!】
ピィーーッ…………!!!!
その【イビルアイ】の忠告の言葉が何とかサンとライムスへと間に合い、彼らの耳に届けられた途端に甲高く不快になるくらいに大きな《リコーダー》という特殊な笛の音が辺りに響き渡るのだった。
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