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~奇怪で異常なミラーハウスからの脱出~

ガシャーーーンッ!!! 地面がビリビリと振動する程の大きな笛の音が辺りに鳴り響いた後、周りを取り囲む鏡が一斉に割れる。慌てて、サンとライムスは割れた鏡の破片が飛び散り体に当たるのを防ごうとしたものの――余りに唐突に起きたため、ライムスの体に一際大きな鏡の破片が突き刺さってしまう。 ライムスはスライムのため、鏡の破片が突き刺さっても体から血が流れたり痛みを感じる事はないのだが、その代わりに身動きが取れなくなってしまう。 【もう、もう……終わりにしよう。ダディ……こんな事をしていても……誰も救われないよ――】 【アダム……私を裏切るのか!?お前まで……私を異常な者だと蔑み、私から離れるつもりかっ!?許さない……許さない……私は、この偉大なる研究の成果を世に発表し……愚かな者達から称賛されるべく存在となる筈なのだっ!!そのスライムはこれからの研究に必要なのだ!!】 【違う……違うよ……ダディ。ボクはただダディを心の底から愛しているだけ……そして、間違った事をしてほしくないだけ。でも…………それも届かないのなら、もう終わり。全てを終わりにしよう。モルモト、キティ……ぼくらが完全な家族になるために……やってくれっ……】 その【共依存ビ男】の予想もしない行動を見てサンと、それにかつては彼と仲間だった筈の【イビルアイ】ですら言葉を失って呆然としてしまった。 ―――食べた、のだ。 いつのまにか【共依存ビ男】の後ろにいた【キメラアントの男の子と女の子】が物凄いスピードで彼に飛びかかると美味しそうに、そしてどことなく嬉しそうに【共依存ビ男】の全身を――あっという間にムシャムシャと食べていき、そして最後はその【キメラアントの男の子と女の子】は互いに体を抱き寄せると――そのまま、まるで雪が溶けるように跡形もなくなってしまったのだが、なぜか跡形もなく消えた筈の男の子と女の子がいた場所には、犬と兎が合成したような不思議な生き物が横たわりスヤスヤと眠っていた。 ―――顔つきは、まるでポメラニアンみたく縫いぐるみのように愛らしい。 ―――全身はまるで雪のように真っ白でフワフワの毛で覆われており、兎のように愛らしい。 ―――ズォォォォォッ!! 呆然としてしまったサンが、どこかから聞こえてくる変な音を耳にした時には、己の意思に反して体が浮かび上がっていた。慌てて、鏡の破片によって張り付けになっているライムスの方へと目線を向けると、同じように体が浮かび上がっている。 何故か【イビルアイ】や、かつては【キメラアントの男の子と女の子の姿だった謎の生物】も浮かび上がっている事に気付いたが――その事に疑問を浮かべる間もなく、サンとライムスは割れた筈の鏡の中へと勢いよく吸い込まれていくのだった。

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