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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
【もりのなかで、さんにんむすめと――】
【――あそんではいけないと、かあさんはいった】
【――もりはくろく、くさはみどり――】
【――すのーどーむもって、いちばんうえのむすめキッコがきた】
~♪~♪♪♪~♪♪~
~♪♪~♪~♪♪♪~
ふと、どこかから―――聞いた覚えのある女の子の美しい歌声が聞こえてくる。よくよく耳を澄ましてみると、それは呆然と立ち尽くす僕のすぐ側から聞こえてくるのが分かり――おそらく、声の主がいるのだろうという方向へと、ゆっくりと目線を向けた。
そこには、僕と誠をこの世界に引き摺り込んだ―――【顔の部分が真っ黒な赤ずきん人形】が立っていた。しかし、何だか様子がおかしい。ただ、その場に立ち尽くしている僕に襲いかかろうともせず――どことなく悲しげな声で同じ歌詞を繰り返し歌っているだけだ。
ばくんっ……!!
それは、突然の事だった――。
まだ悲しげな歌声を辺りに響かせていた【顔の部分が真っ黒な赤ずきん人形】の周辺の影がぐぐっと伸びたかと思うと、僕が声を発する間もなく、赤ずきん人形の周辺にある影が黒い狼の形になり――そのまま彼女を飲み込んでしまったのだ。
―――それは、本当にあっという間の出来事で慌てて【赤ずきん人形】がいた筈の場所へと駆け寄る。
【きゃはははっ――だいせいこう、だいせいこう!!これで、おなかいっぱい。でも、このえものはどうしようか、どうしようか――ねえ、ノッコ――いたずらって、たのしいね♪】
【わたしたちがつくった、かげえのおおかみさん、おなかいっぱいだって。でも、でも――まだ、えものはいるよ?ふたりも、えものがいるよ?どうしようか、どうしようか――キッコとコッコ?】
僕が駆け寄った途端に【赤ずきん人形】がいた筈の場所の木の脇から二人の子供の楽しげで――それ故に残酷そうな笑い声が聞こえてきて僕を値踏みしているかのように見下ろしてくるのだった。
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