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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
【おにいさん、おにいさん、スノードームを、ありがとう、ありがとう。これで思う存分に、おにいさんたちと遊ぶことが出来るわ、出来るわ。わたしは、いちばんうえのむすめのキッコ――いちばんうえのむすめのキッコよ♪】
ふいに、いちばんうえのむすめのキッコと名乗る女の子が黒い女の人から手渡されたスノードームを持ちながら、さきほど《黒い狼》によって真っ白な雪に覆われた地面の上に押し倒された僕の元へと、まるで歌を歌うように陽気な声で話しかけつつ歩み寄ってくる。
―――キッコと名乗る、いちばんうえのむすめは赤い布地に白い小花柄が描かれている頭巾を被り、水色の布地に赤い大きな薔薇模様が刺繍された可愛らしいドレスを着ている。
【あたしは、にばんめのむすめのノッコ――にばんめのむすめのノッコ。キッコは、おねえさん――おねえさん。おにいさん、おにいさん――あたしたちといっしょに、あそびましょう?】
―――ノッコと名乗る、にばんめのむすめは黄色い布地に赤い小花柄が描かれている頭巾を被り、桃色の布地に青い大きな薔薇の花が刺繍された可愛らしいドレスを着ている。
【キャハハハッ―――キッコもノッコも、おおはしゃぎ、おおはしゃぎ!!これから、おにいさんたちと、かくれんぼするつもりだから、おとなげなくおおはしゃぎ!!ほら、あそこ――あの、おにいさんといっしょに――かくれんぼ♪コッコは、いちばんしたのむすめだけど――キッコとノッコより、おとなだもん!!】
―――コッコと名乗る、いちばんしたのむすめは緑色の布地に黄色い小花柄が描かれている頭巾を被り、紫色の布地に黄色い大きな薔薇が刺繍されたドレスを着ていおり、片手に炎がゆらめく蝋燭を持っている。
そして、いちばんしたのむすめのノッコが僕に話しかけ終えた後で指差した方向を、おそるおそる見つめてみると――そこにはグッタリとして肩で息をしている誠が今の僕と同様に真っ白な雪が降り積もる地面の上に、いつのまにか横たわっているのだった。
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