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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
ザクッ――
ギュッ……
ザクッ――
――ギュ、ギュッ……
得たいの知れない黒い何かが誠と《スノードーム》を泉の中へ引き摺り込んでから少したち、ハッと我に帰った僕は慌てて泉へと駆け寄る。
だが、森一面を覆ってしまう程の厄介な雪に足を取られてしまい――中々、うまく近付けない。
「ま、誠……誠っ……あっ…………!!?」
―――元々、このミラージュに来る前の世界にいた時も運動が苦手な僕は案の定、盛大に転んでしまってうつ伏せ状態になってしまった。
【あなたが落とされたのは《愚者》ですか?】
【あなたが落とされたのは《世界》ですか?】
それでも、ズリズリと体を這わせながら何とか泉の方へと向かうと、泉の中から、まるでオペラ歌手のように綺麗な女性の声が聞こえてくる。
ザザザザァ~………
そして、未だに白い地面にうつ伏せ状態になりながら、おそるおそる首と目線を前に向けた僕の前に現れたのは――二本の黒くて長い触手のようなもので《気絶している男の子》と《透明な色のないスノードーム》を巻き付けて捕らえている――頭に花冠をつけた全身が真っ黒い女性の姿だった。
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