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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
「おい、お前は……誰だ!?さっきから俺に慣れなれしく話しかけているが……俺は王宮で……お前のような者の姿など見た事がない。」
「誠――?本当に僕の事……忘れちゃったの?」
ふと、誠が僕の顔を怪訝そうな表情を浮かべながら見つめている事に気付く。すると、誠の方から思いもよらぬ言葉を、ぶっきらぼうに言い放たれてしまった。
まるで、後ろから鈍器で頭を殴られてしまったかのような、とてつもない衝撃にみまわれてしまった僕は思わず涙ぐんでしまいそうになりながら幼い頃の誠のような姿をした少年へと尋ねる。
「ど、どうして……どうしてそんな事を言うの?誠は……誠は……僕の事を本当に忘れちゃったの?」
(こんな事で泣いた所で――誠を困らせて迷惑をかけてしまうだけだ……早く、早く……泣き止まないと……っ…………)
頭の中で分かってはいるものの、ずっと一緒にいた仲間であり、世界で一番大好きな誠が僕の存在を忘れてしまったという余りにも残酷な事実に――どうしても涙を止める事が出来ずに自然と涙が止めどなく溢れてしまう。
「なっ――何だよ……何で泣くんだよっ!?仕方がないだろうが……俺は本当にお前を知らないんだからっ…………それに―――」
「―――誠ってのは誰の呼び名なんだよっ?俺には《マーロン・コルト・東亞(とうあ)》っていう立派な名前があるんだよっ!!」
僕が止めどなく涙を溢れさせてしまった様子を見て、どことなくばつが悪そうにマーロン・コルト・東亞と名乗った少年が言い放ってきた。
「マーロン・コルト・東亞!?」
「ああ、そうだよ……何だよ、文句でもあんのか?」
僕が聞いた記憶がない少年の名前を復唱してから、ジッと彼の顔を見つめると――ふてくされたように頬を膨らませ、そのままソッポを向いてしまうのだった。
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