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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side

「い、いや……僕は……別に文句なんてっ……て……んむっ!?」 「しぃっ……静かにしろっ……何か……変な音……いや、声か……と、とにかく……なんか聞こえないか?」 そのマーロンと名乗った少年の言葉に対して反論しようとした僕だったが――急に、半ば強引に彼から口元を手で塞がれてしまい、目を丸くしながら間抜けな表情を浮かべてしまう。 だが、彼は僕をからかっているような素振りではなかった。そのため、僕は怪訝そうな表情を浮かべつつも、僅かに警戒心を抱きながら辺りをキョロキョロと見渡し、同時に耳を澄ましてみた。 ――ザクッ 【ふ…………】 ギュッ、ザクッ――― 【しゅ~………ふ……しゅ~………】 ギュッ、ギュッ―― 確かにマーロンの言う通り、雪を踏みしめる音と――低いボソボソとした男の声――いや、あるいは息づかいらしき音が聞こえてくる。 しかも、その距離が――かなり僕たちと近いのが、何となくとはいえ分かる。 だからこそ、僕は油断していたのだ――。 【カァッ、カァァッ~………!!】 ―――急に闇のように真っ黒くて大きな―――ゆうに僕の三倍程はありそうな体躯の【カラス】が周りにしか警戒のいっていなかった僕の頭を目掛けて襲撃してきたのだ。 「………うう……っ……!?」 「おいっ……油断してんじゃねえよっ!」 雪の上に勢いよく仰向けに倒れてしまった僕が、マーロンのどことなく慌てているような声を聞いている暇もなく、その【カラス】は先程取り戻したスノードームを奪いとってしまうのだった。

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