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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
「ダ、ダメッ――それを返してっ!!」
あの真っ黒な女の人が渡してくれたスノードームを【カラス】に奪いとられてしまった僕は全身を襲う痛みに耐えつつ、慌てて身を起こすと、必死でそれを取り戻そうと手を伸ばした。
【カラス】はまるで、一組の兄弟の兄が幼い弟をからかうかのように、慌てふためく僕の手が届きそうなスレスレの場所に留まり、嘴にくわえたスノードームをわざとらしく見せつけながら、その場を飛び回り続けているのだ。
―――どうみてもバカにされているとしか思えないその【カラス】の態度に苛立ちを覚えつつ、僕は必死でそれを取り戻そうと手を伸ばすことしか出来ない。
――バサ、バサッ―――
【カァァッ~………カァァッ!!】
すると、突然―――【カラス】が一際大きな声で鳴いたかと思うと、そのまま僕から見て左側にある森の獣道の方へと飛んでいった。
「ま、待って―――待ってってば――!!」
「あ、おいっ――お前こそ、待ちやがれっ――そっちは……っ…………」
慌てて【カラス】を追いかけようと、必死に左側に獣道の方へと走る僕の耳には――僅かばかり動揺しているマーロンの声など入ってこないのだった。
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