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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
▽ ▽ ▽ ▽
――ザクッ……
【グェェ~…………ギャアッ……カァァッ~!!】
ザク、ザクッ……!!
「こ、このっ……いい加減に、それを返してよっ――!!」
「おいっ……だから、止まれって言ってんだろうがっ………その気味のわるい鳥の狙いはっ―――」
―――ただでさえ狭い森の獣道。
―――ましてや雪が降り積もり、とてつもなく走りにくい。
しかし、だからといって【カラス】を追いかけるのを諦め、スノードームを取り返すという目的を放棄する訳にはいかない。
きちんと、あの真っ黒な女の人の《偽物の赤ずきんを被った看板娘人形に本物の赤頭巾を返してほしいという願い》を叶えてから―――スノードームを返すのだ。
願いを込められ、手渡されたのは僕なのだから―――ちゃんとその責任は果たさなくちゃならない。そんな事は、僕にだって分かっている。
【グェェッ、グァァ~……ガア、ギャア~……!!】
明らかに僕とマーロンが雪道をかき分けつつ、獣道を必死で走っていくスピードよりも【カラス】が僕達をおちゃらけながら飛び回るスピードの方が早い。
それゆえに、この【雪の降りしきる森】という場所は――人間である僕とマーロンにとって不利な事を痛感せざるを得なかった。
―――ポトッ
それは、突然の事だった。
今まで散々、僕とマーロンを翻弄し続け――その嘴から決してスノードームを離そうとしなかった【カラス】がポイッと、それを放り投げたのだった。
「……………っ……!!?」
僕は真っ白な雪の中に放り投げられたスノードームを拾い上げようと、慌てて向かう。そして、雪に埋まってしまったそれを急いで拾い上げようと身を屈めた時―――、
【ふ……しゅ~……ふ、ふ……しゅ~……】
男の人の息づかいのような、はたまた声なのか判断しにくいような音が僕の頭上から聞こえて――不安に思いつつも、おそるおそる見上げてみる。
そこには―――、
―――胸元に真っ白い蝶ネクタイがついている黒いマントを身に纏い、
―――鋭い嘴のついた真っ白な鳥形の仮面を顔につけ、
―――本来ならば下半身があるべき筈の場所から十数本の触手がうねうねと蠢いている。しかも、その蠢いている触手の先端には僕やマーロンにもついているような【人間の口】がついているのだ。
その下半身に蠢いている気味の悪い触手さえなければ、パッと見は普通の人間に見えなくもないような男の人が――スノードームを拾い上げようとしていた僕の側に音もなく近寄り、ジィッと見下ろしてくるのだった。
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