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【赤ずきん】と森の迷路とスノードーム ※優太・誠side
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「おい、これは一体……どういう事だよ!?先に進んでる筈なのに――景色がまったく変わらないじゃねえか……っ……!?」
「マーロン――マーロン――」
己の名前を繰り返し呟き続ける弱りきった男を背中に背負いながら、必死で雪道を歩き続けていたが、先に進めという矢印看板に従って歩いていたにも関わらず、何度も――何度も――繰り返し、赤い玉ねぎ屋根のキノコのように奇妙な形をした建物に戻ってしまう。
これでは、まるで―――永遠に続く迷路のようだ。
このままでは、間違いなく――この雪に閉ざされた森の中に永遠に閉じ込められてしまう。少なくとも、背中に背負った男は自分よりも確実に弱りきっている。
「このまま―――二人仲良く雪の中ってか――そんなん、冗談じゃねえよ!!」
「―――チ――カ、ソウ――――タ――」
と、俺が森中に響き渡る程の大声で叫び終え、雪の降り続ける空を見上げた。すると、聞き覚えのない言葉を初めて背中に背負っている男が呟いた、その時―――、
【嬉しいな……久々にオレの名を呼んでくれたね――ユウタくん。ほら、ソウタくんも――泣きたくなる程に、喜んでいるよ?】
【優太、優太っ……お願いだから――目を覚まして……お願いっ!!】
本当に唐突に、愉快げな声と悲痛な声が二つ――見上げた空の方から聞こえてきた。
しかし、声は聞こえども明確な姿は見えない――。
ただ、その後に―――見上げた空の方からポタリ、と涙のような雨粒が落ちてくる。そして、それは自然と一つの木の上に落ちる。
すると―――ズン、ズンとその雨粒が落ちた木が物凄いスピードで成長していき、天までに届きそうな程に伸びていく。
そして、マーロンは信じられない光景を見た。
物凄いスピードで成長していく木の枝に【巨大なカラス】と【真っ白な鳥形の仮面を着けた不気味な男】が引っ掛かり――そのまま、天の方へと上に上に消えていくのを。
どんどんと天まで伸びていく木の側に――【豆の木】と幼い子供の字で書かれた札がある事を、マーロンとユウタは知る由もなかった。
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