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【赤ずきん】と森の迷路とスノードームからの脱出 ※優太・誠side
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その後、まるで長い夢から醒めた時のように急に意識がハッキリとした僕は、あまり体の小さなマーロンに無理をさせてはいけないと思い直し――再び己の足で真っ白な雪に埋もれている森の中を歩いていく事にした。
そのまま再び激しくなった吹雪の中を
二人で黙々と歩き続けていたのだが、ふいに雪の降り積もっていない異様ともいえる場所に出た。
―――地面には赤茶色のレンガが敷き詰められている。
―――赤い屋根がついたレンガ造りの家がひとつ。窓からはオレンジ色の明るい光が仄かに漏れているのが外から見ても分かる。
―――そして中から聞こえてくる楽しげな笑い声。よくよく耳を澄ましてみると、流石に年齢まではハッキリとは分からないが男の人と女の人――そして、幼い子供の賑やかな笑い声が聞こえてくるのだ。
「ね、ねえ―――マーロン、どう思う?中に入って彼らに話を聞いてみようか?」
「あのな……お前――どう考えたって【敵】の罠に決まってんだろ!!大体、何でここら辺に雪が降り積もっていないか考えてもみろよ――俺らを安心させて襲うために決まってるだろうが」
―――【敵】の罠?
―――本当にそうなのだろうか?
という事は、今……窓の外からコッソリと見つめている僕らの目に映る家族らしき彼らの暖かそうな微笑みは――全て偽物なのだろうか?
こんなにも心の底から楽しげに笑い声をあげている彼らを羨ましいとさえ思うのに―――。
(僕も大切な仲間と大好きな誠と想太と――彼らのように温かく笑い合いたい――そのためには早く、早く――この雪に支配された――この世界から出ないと……っ……)
そんな事を心の中で考え込み、ひとりでモヤモヤしていると――、
【いちばんうえのむすめのキッコは、やくたたず~…………にばんめのむすめノッコだって、やくたたず~……あたしがのぞむもの……てにいれられないやつらは……み~んな、やくたたず~……あたしはあったかいのがほしいのよ……ほしいのよ……つまらないものは……み~んな……つめたいわ、つめたいわ……こおりみたいに……つめたいわ~……】
―――雪が降り止んだとはいえ冷凍庫のように冷たさに包まれている森の中から、またしても【いちばんしたのむすめコッコ】の歌声が聞こえてくるのだった。
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