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【赤ずきん】と森の迷路とスノードームからの脱出 ※優太・誠side
【あたしのたのしみをじゃまするヤツらは――み~んな、つめたいわ――つめたいのよ―――だれも、だれも――あたしののぞみを――かなえてくれない――あたたかいものを―――くれないじゃない!!】
仄かに燃える蝋燭を持つ【いちばんしたのむすめコッコ】の手が小刻みに震えている。それは、怒りからくるせいなのか他の感情からくるせいなのかは定かではない。
しかし、どことなく―――僕には怒りよりも、もっと別の感情からくるもののような気がした。
【せっかく―――せっかく、この魔法のロウソクで――あたしをあったかくさせてくれるものを――てにいれられるとおもったのに――あの、くろいおようふくをきたおにいさんたちも――そういっていたのに――のこったのは、あたしだけ――ロウソクのかげでつくったキッコとノッコも――きえちゃった――】
―――くろいおようふくのおにいさんたちとは、あのスーツ姿の男とその仲間達のことだろうか?
(もしも――そうだとすれば、この子は――この少女は―――もしかして……っ……)
チラリと横目であの赤い屋根のついた家を見つめる【いちばんしたのむすめコッコ】に気付いた僕は―――頭の中で、ふいに昔ばなしに出てくる――哀れな少女の姿が浮かんだ。
そして、不思議な事に何の戸惑いもなく―――自然と【いちばんしたのむすめコッコ】に近付いていく。
「お、おいっ…………一体何をする気だよ!?」
「……………」
いきなりの僕の行動に戸惑うマーロンの声を耳にしたが、彼の言葉を無視してしまった事に対して申し訳ないと思いつつも彼女を抱き締めるのを止めるつもりはない。
「…………マッチ」
【えっ…………!?】
「きみは……マッチを持っているよね?僕にマッチを買わせてよ。」
キョトンとしている【いちばんしたのむすめコッコ】へ僕は確信めいた言葉を投げ掛ける。その言葉を聞いた瞬間に、彼女の瞳からは一筋の涙が流れていくのだった。
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