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~久々の休息――の前にミミック坊やの元へ~②

▽ ▽ ▽ ▽ 「ドッカァァァン……汝らの願いを言ってみるがよい―――【世界】から舞い戻ってきたニンゲンどもよ!!」 「この塔に無理矢理、連れ去られてしまった人たちを元の世界【ダイイチキュウ】に戻してほしい。それと―――おそらくだけど、この塔の最上階にいる哀れなエルフ達も解放して村へ返してあげて。もちろん、僕らの事情に巻き込んで片目を失ってしまったガルフさんも―――」 ちら、と僕は片目に眼帯を巻いているガルフさんを一瞥してから《ミミック坊や》へ願いを言った。 「ふむふむ、なるほど――おおまかに数えてみても、二つじゃな。だが、もうひとつお主の願いを叶えてやってもよいぞ――さあ、もうひとつの願い――お主は何を望むのじゃ?」 (―――もうひとつの願い……本当なら、想太と共に――誠と知花と一緒にミラージュでの記憶を忘れてダイイチキュウで暮らしたい……でも……っ……) ―――僕には、まだ想太とは別に救うべき仲間がいる。 ―――ナギは塔の最上階で、スーツ姿の男とその仲間達に囚われながらも、ずっと僕らを待っててくれている筈――そんな彼を見捨てるなんて絶対に嫌だ。 「この衣装にかけられたチャセックの呪いを――解いてほしい。これ、かなり恥ずかしいんだよ――そうだよね、ミストとライムス?」 「え~……そう?ミストはずっとこのままでも良いくらいだよ?ユウタったら恥ずかしがりやさんなんだから~。これ、可愛いじゃん―――マコトもユウタにメロメロなのに――って、ああ――それは前からだね~」 「わぁ~……真っ白でホワホワで可愛いです~。ユウタさん、このこの名前――決めました、ホワリンに決定です!!」 ミストはミストで僕と誠の仲をからかうような答えを言うし、ライムスはライムスで見覚えのない兎の背中に赤い目がついた謎の生き物に夢中で、それどころではないらしい。 「茶番は――もう、よいのじゃ。お主の望みを全て叶えてやる事にしよう。しかし、すぐにとは言わぬ。お主の願いを全て叶えてやるには、それ相応の時間がかかるのじゃ。そうじゃな、今は夜だから――夜明けを迎えると共に叶えてやろうぞ?それまで、しばし休息するがよい」 そう言うと、ミミック坊やは――それ以後、言葉を発する事はなくなった。 「あ、あの――良ければ夜明けまで、一緒に過ごしませんか?色々お話したい事もありますし、その――少しですけどウチのリーダーがお食事を用意してくれましたので……っ……」 ふと、後ろから声をかけられた――。 其処には、セーラー服の少女が少し緊張しているのか、頬を僅かに赤く染めながら立っていたのだった。

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