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~素直になれない二人~ ※サン・引田side
▽ ▽ ▽ ▽
「貴様―――どういうつもりだ!?奇妙な格好をして、私を面倒事に巻き込むつもりか!?」
「はあ?あんたこそ……その人を見下してるような口調は何なの?ぼくの事を言う前に、その歪んだ性格を直したら?それに、あんただって――あのキモい変態男みたいに――ぼくのこの格好にドキッときちゃったんじゃないの~?」
サンは己以上に頑固な引田に対して、若干嫌気がさしていたものの―――このまま、あのオタク風な男を引田に関わらせてはいけない、と本能的に察して彼を強引に優太達やリーダーらがいる場所とは少し離れた別の場所へと連れてきた。
―――確かに裸エプロンを身に付けた引田は普段の制服姿の彼とは違い、なんともいえない魅力を僅かながら感じてしまう。
「なっ……なにをアホな事を言っているんだっ……!?大体、貴様はどうしてこんな浅ましい格好をしている!?」
「ん~……理由?どうしても知りたい?だったらさ――ぼくの事を襲ってみなよ……なんちゃって!!」
ニヤニヤと笑いながら愉快げに話してくる引田の言葉の意味をサンは真面目な様子で考え込んでしまう。サンの中に、冗談という言葉の概念はないらしい。
「襲うとは――貴様を喰うという事か?そんな低俗な事を……高尚なエルフである私がする訳がないだろう?」
「は~…………なんか、バカらしくなってきた。もう、いいや――あのね、ぼくがこんな浅ましい格好をしてるのは噴水から水を汲もうとして滑って落ちて、ずぶ濡れになったからなの!!流石に可愛い女の子もいるんだから素っ裸で過ごす訳にはいかないでしょ。だから、あの男からこれを借りたの!!単にこんな格好してる訳じゃないの―――これで分かったかな――高慢で偉そうなエルフのリーダーさん!?」
冗談つもりで放った言葉の意味を真面目な顔をしながら尋ねてくるサンに心の底から呆れたのか、深い溜め息をついた引田は少しムキになりつつ、裸エプロンを身に付けている理由を彼へと説明するのだった。
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