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~素直になれない二人~ ※サン・引田side
「貴様―――いくら服を濡らして着るものがないからといって……あんな奇怪な男に渡されたものを疑いもなく着るとは……やはりアホなのか?」
「なっ…………あのまま裸で過ごせば良かったのにとでも言いたいの?それに、あの男が怪しいからといって無下に断るなんて……いくらなんでも失礼だろ!!」
―――バサッ……
「……………っ……!!?」
そこまで言い切った引田の顔にサンは己が身に付けていた紫色の上着を少し乱暴に投げ付けた。あまりにも唐突な事だったため、引田は目を丸くして呆然としつつも上半身裸になったサンをチラリと横目で一瞥する。
「鈍感め―――それに、貴様は底抜けのお人好しだな。あの男が貴様を卑猥な目付きで見つめているのに――何故、気付かぬ?」
「あんたこそ、ぼくをバカにしすぎ!!あんなド変態男のことを―――ぼくが本気で気遣っている訳がないでしょ。ただ、体裁があるから……仕方なくやってあげてただけだしっ――べ、別にあんなド変態男の事が怖いわけじゃないんだから……っ……!!」
と、そこまで引田が言って―――始めてサンは気付く。
引田の体が小刻みに震えているいることを―――。
それを知ったサンは行動に移さずにはいられなくなり、不機嫌そうにソッポを向いてしまった引田の背後から――未だに震えが止まらない彼の体をギュッと抱き締めるのだった。
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