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~宴と共に――夜は更ける~
▽ ▽ ▽ ▽
「あ、あの――いきなりで、ごめんなさい。えっと……ホワリンだっけ?君は一体、いつから僕らの元に来たの?」
「はあ?俺はホワリンなんつー……ダセエ名前じゃねえよ。《イビルアイ》っつー格好いい名前があったんだよ……それをアイツがヘマしたせいで……ったく、とんだ災難だったぜ。でも、まあ――美々ちゃんが楽しそうで良かったぜ。案外、強い子みてえだな――」
皆が酒盛りで、どんちゃん騒ぎをしている中、そのバカ騒ぎの喧騒に堪えきれずに眠りから目を覚ましてしまった僕は、先程からずっとその存在が気になっていた《背中に赤い不気味な瞳がついた兎のような生き物》へと目線を移して寝床からゆっくりと体を起こすと――少し緊張しつつも思いきってホワリンとやらに尋ねてみた。
ホワリンが熱い視線を送っている場所を見てみると、そこにはタチの悪い酔っぱらい達の相手を必死でしているセーラー服の少女がいる。因みに、何故かミストはアイドルーナの黄色い衣装を着たままノリノリでベロベロに酔っぱらったオヤジや若者達にダンスを疲労しており、その横では青いアイドルーナの衣装を着た人型となったライムスが酔っぱらった女性に可愛いと言われながら撫でられたり、キスされたりして困惑していた。
誠は、そんなミストやライムスの姿を呆れた様子で見つめるのだが、心なしか少しだけ楽しそうに口元を歪めてしまっている。
「えっと――つまり、ホワリンさん。あなたと、あのセーラー服の少女とは知り合いっていう事ですか?」
「知り合いもなにも、彼女は俺が元いた世界――ダイイチキュウにいた頃の教え子だっつーの。つまり、俺は彼女にとって《教師》だったんだよ。まあ、彼女の願いを叶えられなかった俺が――今更、教師を名乗る事は出来ねえけどな。まったく、彼女が愛した奴を救えなくて――何が教師だよ。」
(やっぱり―――彼らにも事情があるんだ――僕には到底理解できない程の――深い事情が……っ……)
―――僕は思わず口をつぐんでしまった。
―――彼に何と声をかければいいのか分からなくなってしまったからだ。
ホワリンとセーラー服の少女との間にある事情をよく知りもしない僕が在り来たりの慰めの言葉をかけた所で彼の心を上手に慰められる訳がない――と思ったせいだ。
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