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~宴と共に――夜は更ける~

「おい――そんな辛気くさい顔をしてんじゃねえよ!!俺まで辛気くさくなっちまうだろうが―――ほら、これでも飲め!!俺の下僕ピクシー作の《マガイ酒》だ―――どんどん飲め!!」 「えっ…………マ、マガイ酒――って、うわっ――!?」 ――パタ、 ――パタ、パタッ 急に僕の耳に―――何かが飛んでいるような音が聞こえてくる。 僕の前に置かれたひとつのコップ―――。 その中に透明な液体が溢れんばかりに入っている。パッと見は、色や香りもないため―――水にしか見えない。 しかし、唐突に謎の羽音がしたかと思うと――そのコップの周りに小妖精《ピクシー》が何体も集まってきた。衣装を身に付けない普通のピクシーとは違い、体全体に白い綿のような衣装を身に付けている。まるで、タンポポの綿毛のようにも見える。ただ、《ピクシー》特有の細長い耳は健在なのでそこがタンポポの綿毛とは違う所なのだが―――。 よくよくその《ピクシー》達を観察してみるとホワリンの命令に従って何かそのコップに細工をしているかのように思えた。 「あ、あのっ…………僕はまだ学生だし、お酒は飲めないんですけど……っ……」 「はあ――っ!?そんな真面目ちゃんの常套句なんて言ってんじゃねえよ――大体、ここはダイイチキュウじゃねえだろうが!!そもそも、なんで俺に対してだけ敬語なんだよ!?」 「だって……その……まだ出会ったばかりだし。それに、ダイイチキュウでは学校の先生だったんですよね?だから、その――敬語の方がいいのかなって……」 そう答えると、兎の背中に赤い目が存在する不思議な生き物ホワリンは――呆れたように溜め息をついてから緊張しきっている僕の側へと寄ってくるのだった。

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