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~宴と共に――夜は更ける~
「………お、おいしいっ……!!?」
チコリの実の、ほんのりとした甘さと酸っぱさ――それに、若干の苦さがうまい具合に混ざり合い、とても飲みやすい。
まるで、ダイイチキュウでよく飲んでいたジュースのようだったのだが、ひとつだけ違う点がある。
―――体全体がビリビリと雷に打たれたかのように思え、それだけでなく燃えるように熱い。
―――しかし、それは苦痛を抱くという程のものではなく、むしろ心地よささえ感じてしまうのだ。
もしも、ダイイチキュウでお酒を飲んで酔っぱらったのだとしたら――その時も、このような気持ちを抱くのだろうか。もちろん、ダイイチキュウでは学生で酒など飲んだ事がなかったから分からないのだけれど―――。
「どうだ、マガイ物の酒とはいえ―――ベロベロに酔っぱらう事の暑さと心地よさは感じるだろう?当然だ―――こいつら《シープ種のピクシー》は疲れきった奴等を癒すために存在するんだからな」
「…………シープ種のピクシー……マガイ物の……酒!?それって…………何なん……れすか~?」
ダ、ダメだ―――。
マガイ酒とやらを飲んだせいで、頭がボーッとしてきた。いや、それどころか――呂律さえも上手く回らなくなってきたのだ。
でも、とても心地よい―――。
今までの嫌な事や辛い事――その全てが吹っ飛んでしまいそうになる程に気持ちいいのだ。
それだけでなく、とてつもなく眠くなってきた――。
「―――お前は普通の酒よりも、こっちの方が合ってるみてえだな。そのマガイ酒は《シープ種のピクシー》の息を水に吹き掛ける事により、いわゆる催眠作用のような魔術がかけられるのさ。そうすると酒みたいな味や特性が現れるから《マガイ酒》って呼ばれているんだ。」
「因みに、精神的に弱った奴を癒す効果も抜群だし――中にはこのマガイ酒を媚薬として使う奴等もいるらしいぜ――せいぜい、気をつけろよ?まあ、俺はそんな下衆な使い方はしねえけどな。それにしても、お前―――凄い顔になってるぜ?」
ニヤニヤと笑いながらマガイ酒を飲んだせいでタコのように真っ赤になってしまった僕を見つめつつ、ホワリンは心の底から愉快げに、からかってくるのだった。
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