362 / 713
~生意気な囚われエルフと金の呪いの糸車~
▽▲▽▲▽▲
優太達が酒盛りをし始める少し前のこと―――。
ナギは《一番偉い塔の支配者》による精神的苦痛を含めた拷問を受けた後で、ずっとさ迷い続けていた【悪夢の世界】から―――ようやく解放されたと同時に薄暗い部屋の中で目を覚ました。
王宮に連れて来られる前まで肉体労働を目的とした奴隷としてだけで存在していたナギは肉体的な痛みはともかくとしても精神的な痛みには慣れていなかった。
そんな彼に対して《一番偉い塔の支配者》が与えたのは【愛するシリカという王子から己の存在さえも忘れ去られる】【愛する仲間達から捨てられる】【王宮に連れて行かれる前の奴隷として存在していただけの無惨な過去を思い出させる】という万華鏡のようにぐるり、ぐるりと周りを取り囲みながら精神的に追い詰める映像を延々と見せ続け―――次第に己だけを信じ込ませるというマインドコントロールという名の拷問だった。
「ん~…………出会ったばかりの時は生意気な口をきいていた君も、流石に【夢地獄】からは逃れられなかったみたいだね?流石は、あの恐ろしい王子様が思いついた精神的拷問世界だ。それは、ともかく――やっと僕の言うことを聞く気になったかな?それじゃあ……ここまでおいで?」
「は、はい……ご、ご主人様…………」
――ペタ……
―――ペタ、ペタ…………
精神的に追い詰められて死んだ魚のように生気を失った目付きをしつつ、ナギはボンヤリとした頭で《一番偉い塔の支配者》の姿を何とか認識すると―――うつ伏せで冷たい床に倒れていた体をゆっくりと起こしてから覚束ない足取りで余裕そうな笑みを浮かべている《塔の支配者》へと近付いて行くのだった。
ともだちにシェアしよう!