363 / 713
~生意気な囚われエルフと金の呪いの糸車~
「よしよし、いい子になったね。もっとこっちにおいで?ほら、アラクネちゃんも……従順な犬みたいになった《お人形》の君を――待っているよ?」
「…………はい……一番偉い……塔の支配者様……」
―――カラ、
―――カラ、カラ…………
なにかを熱心に巻いている音が部屋中に響き渡るが、既に《一番偉い塔の支配者》の存在しか目に映っていないナギはひたすら真っ直ぐに歩き続けていく。
意地悪な王子による精神的拷問魔法の《夢地獄》に囚われ、マインドコントロール状態に陥ってしまっている今のナギの心の中には【抗い】【疑念】【恐怖】といった概念や感情等は―――もはや存在すらしない。
操り人形のように、ただ―――《一番偉い塔の支配者》の命令に従うだけの存在となってしまった。
それ故に《一番偉い塔の支配者》が手招きする方向に【金色に輝く糸車】が、ひとつ置かれている事も、薄暗い部屋の天井には――キラキラと光る金色の糸によってダラリとぶら下がっている沢山の《お人形》がいる事にも――ナギは気づけない。
天井にダラリと《お人形》の全身にはグルグルと金色の糸が巻き付いており、その糸の中に何が存在するのかさえ分からない。かつて、人間だったのか――それとも他の魔物なのかさえ―――判別が出来ないのだ。
糸車をカラカラと熱心に巻き続ける《二番目に偉い塔の支配者》―――アラクネにとって、そんな事はどうでもよいのだ。普段であれば、その《お人形》達は己の餌となるだけの存在でしかないので、金糸の中に何が入っているのかなどは重要ではなかった。
しかし、今だけは違う―――。
アラクネにとって主人であり、世界で一番愛する人であり、同時に仲間でもある《一番偉い塔の支配者―――《金野 力(こんの りき)》によってお願いされて単なる餌ではない特別な《お人形》を作るために、ひたすら糸車を回すのだった。
ともだちにシェアしよう!