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僕ら一行は大樹の真下で奇怪な生き物と出会う②

「ね、ねえ―――この白いのって……もしかして何かの卵じゃない?ほら、何ヵ所かひび割れてる。それに、まだ生温かいよ?何かが出てきたばかりみたいな――それにしても、この卵みたいなの……随分と大きいな……」 引田が何の躊躇いもなく―――人間の片手程もある白い楕円形の卵らしき物をヒョイッと拾い上げる。確かに彼の言うとおり、よくよく見てみれば所々にヒビが入っている事に気付く。 「皆、その辺に――黄金色の少し大き目のカエルがいないか捜してみて……ミストの予想どおりなら……とんでもない奴が此処にいるかもしれないっ……!!」 「ミスト…………私の目が正しければ彼処にいるのが……そうじゃないのか?だが、ジッとしているし見たところ無害そうだが――お前は何をそんなに恐れているのだ?」 ミストの慌てている様子を怪訝そうな表情を浮かべつつも、サンが僕らがいる所から少し離れたある場所を指差した。 【ゲコッ……ゲッ……ゲコッ…………】 サンが指差した場所には確かに黄金色の大きめなカエルがいる。だが、彼が言うように僕らがいる事に気付いてからも襲いかかってきそうな気配などなく―――沼の水上を軽々しく飛び跳ねながら特徴的な鳴き声をあげているだけだ。 「卵にヒビが入ってるって事は……すでに孵化したってことだ……で、でも……じゃあ――蛇の尾を持つ雄鳥はどこに……っ……!?」 ミストが尚も真っ青になりつつ、小声で何かをブツブツと呟いている。そして彼注意深く辺りをキョロキョロと落ち着かない様子で見渡していると―――、 ―――ドッ――、 ――ドドッ―――ドッ――、 「いたっ……ミストが思ったとおり――コカトリスだ!!奴の吐く息には毒がある!!それと絶対に噛まれないように注意して。気をつけてっ……奴がコッチにくる!!」 「……なっ………い、いつの間に……っ……!!?」 毒ガスのように辺り一帯を覆い尽くす深い霧のせいで視界が悪くなってしまい、ミストが言う【コカトリス】とやらの存在に気付けなかった僕らは唖然としてしまう。 そして、大地を揺るがすかのような【コカトリス】の足音が霧の立ち込める辺り一帯に響き渡ると、ほぼ同時くらいに僕らに向かってミストが叫ぶ声がビリビリと振動しつつ響き渡るのだった。

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