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石の沼と【コカトリス】②

【いつ……までぇ…………いつ、まで……い……つまで~……】 ―――ガッ!! その時だった―――。 ミストが杖を構えて魔法の詠唱をしようと口を開きかけたのだが、目線を真っ直ぐに己目掛けて襲いかかってくる【コカトリス】に向けていた彼は―――足元でみるみる内に徐々に石化かけていき救いを求めるように固まりかけた羽を伸ばす【以津真天(いつまで)】の存在に気付けなかったのだ。 「し、しまった…………ミストとしたことがっ…………!!」 「ミ、ミスト―――危ない……っ……!!?」 ―――ガブッ……!! その結果―――ミストは足元で悲痛そうに鳴き声をあげて救いを求める【以津真天】に気を取られてしまい、寸前まで迫ってきた【コカトリス】の蛇頭に杖を持っている方の腕を噛まれてしまう。 無論、ミストもただ単にやられっ放しという訳ではなく噛まれそうになる寸前――《凍結魔法》で蛇頭を凍らせて動きを封じるために反撃を試みてみたものの【コカトリス】の噛みつきによる石化の威力の方が勝り―――そのまま、数多くの【以津真天】がプカプカと浮かぶ未だに石化しきれていない沼の中へと徐々に沈んでいってしまう。 そして、全身が完全な石像となり、沼の中に沈んでしまう前に放り投げたミストの杖が――コロ、コロと僕の方へと転がってくる。 《ユウタ――ユウタ、ミストの代わりにコレを拾って!!そしてコレの真似をして魔法を唱えて。早くしないとホンタイのミストが――大変な事になっちゃう……っ……》 コロ、コロと僕の方へ転がってきた杖がピタリと動きを止めると、すぐにそれが意思を持ったかのように起き上がるとその場でピョンピョンと跳び跳ねながら言ってくるのだった。

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