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石の沼と【コカトリス】③

急にミストの持っていた杖が動き出したため驚きながら辺りを見渡し、仲間達の様子を確認する僕だったが、普通ならば有り得ない事に気付いた。 ―――僕とミストの杖以外の、時が止まっている。 それは仲間達だけに限った事ではなく、ミストに攻撃してきた【コカトリス】でさえ、今は置物のようにピタリと止まっているのだ。 そして大樹の枝の上にとまっている色とりどりの鳥達は勿論のこと、その大樹のてっぺんに優雅にとまって此方の様子を伺っていた【ハーピー】でさえも―――。 《ユウタ―――この状態で話せる時間は限られてる……だから真面目に聞いてほしいんだけど、これから言う魔法の詠唱を―――キミがミストの代わりにコカトリスに向かって唱えてほしいんだ……》 《△△З$$&αΧΩΩ―――これはコカトリスの石化に対しての抵抗魔法で効き目は完璧には保障出来ないけど、何もしないよりはマシだ__頼んだよ、ユウタ……っ……》 「ち、ち、ちょっと……ミスト―――僕、魔法なんて一度も使ったことがないよっ……僕は――この前まで……魔法なんてものが使えるこのミラージュという世界とは――真逆のダイイチキュウという世界にいたんだ……っ……自信がないよっ……」 《―――い――ょ――ぶ―――》 「……………ええ……っ……!?」 僕の前に転がってきて唐突に話し出したミストの杖は――それきり、動く事も話す事もなくなってしまうのだった。 慌てふためく僕を―――取り残して。

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