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石の沼と【コカトリス】④

「おい―――おい、どうした!?」 「優太……大丈夫か!?」 誠とサンの慌てふためいてている様子の声でハッと我にかえった僕は石化した沼に転がっているままのミストの杖へと目線を移す。 やはり、先程のミストの声は僕にしか聞こえていなかったらしい。いや、それどころか杖が勝手に動いていた事ですら彼らには理解出来ていないのかもしれない。 「優太くん、木下誠……それに、サン!!危ないっ……ボーッとしてる場合じゃないよ……またコカトリスの攻撃がくる……っ……!!」 唐突に引田の大声を聞いた僕はミストの仕掛けた魔法のおかげで今まで止まっていた時が再び動き出したため目前にまで迫ってきた【コカトリス】へと慌てて目線を動かし――そして、思わずたじろんでしまう。 情けない事に、その余りの恐怖と不安から動くことすら満足に出来ず、ガクガクと足を震わせてしまう―――。 【グエェェェ~……グッ……グェェェェッ――】 僕の目前に迫ってきた【コカトリス】は余りに大きく醜悪な鳴き声を聞き、そしてその鋭い眼光に睨まれたせいで――まさに石のように固まってしまうのだった。 「優太……っ……くそ、この化物鳥め!!これでもくらえっ……!!」 ―――ヒュッ――!! 誠の声が聞こえたかと思うと――【コカトリス】の首もとを目掛けて、彼が投げた古ぼけた手斧が飛んでくるのが見えた。 ―――ズゥゥゥゥンッ――!! 「よし、やったか………っ……!?」 誠が投げた古ぼけた手斧の攻撃のせいか【コカトリス】の足元がよろめき、そのまま横へと倒れ込んだ。そして、その状態で黄金の鶏冠を持っている鶏はピクリとも動かなくなるのだった。

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