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石の沼と【コカトリス】⑤

ピョンッ、ピョン……ッ…… 「わ~…………この変な鳥さんを本当にやっつけたのですか!?凄いです、マコトさん!!」 と、好奇心旺盛でトラブルメーカーともいえなくもないライムスが―――ピクリとも動かなくなった【コカトリス】の側に軽やかに跳び跳ねながら駆け寄っていく。 ―――警戒心など、まるでない。 「ダ、ダメだっ―――ライムス、今すぐにソコから離れてっ……早く!!ソイツは卑怯な事に――死んだ振りをしてるだけだ!!」 「そ、そうだよ――ライムス。コカトリスは――コカトリスは……キミを見てる!いや、ただ見てるだけじゃないっ……睨みつけてる――早く離れて!!」 【コカトリス】の首に誠が投げた古ぼけた手斧が当たり、その場に倒れ込んだ事が―――ヤツのハッタリだと気付いた時には既に僕と引田が、ほぼ同時にライムスへと向かって叫んでいた。 「ええっ…………で、でも……ユウタさん、それに御主人さま――体が全然、動かなくなっちゃったんです……ど、どうしましょう!?」 「…………っ……ま、まずい……このままじゃ……ライムスまで……ミストみたいに……石になって沼に……っ……」 ―――コォォォォォッ………… 【コカトリス】が息を吸う仕草をし、そのせいでヤツの口から漏れた音が――辺りに響き渡る。 先程からサンが険しい顔付きをしながら死んだ振りをするのを止めて起き上がり、石のように固まり身動きが取れなくなったライムスを見下ろしつつ息吐き攻撃を繰り出そうとする仕草をしてくる【コカトリス】の首付近を重点的に狙いながら己の弓矢を放っているが―――正直、まったく手応えがないのが目に見えて分かる。 (―――もう、さっきみたいに誠が投げたような斧のような武器もないし……このままじゃ万事休すだ……ミストの杖で魔法を唱えるしか……っ……) そんな事を考えながら、杖をギュッと力強く握り締めた時――僕の手全体を覆うようにボォォォッと金色に光り輝く。 そして、僕の手の甲に――《3》と血のように赤い色で描かれた文字が浮かび上がってくるのだった。

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