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石の沼と【コカトリス】⑥

「△△З$$&αΧΩΩ」 正直、ミストから教わった魔法の詠唱を唱えるのは、かなり不安だったものの―――このままでは身動きが取れなくなってしまったライムスに危機が迫るのは分かりきっていたため、僕は覚悟を決めて――今まさにライムスに食い付こうとしている【コカトリス】へ杖先を向けて詠唱をした。 ―――しかし、これといった変化が起こらない。 先程、誠が何処かから拾ってきた手斧を【コカトリス】の首を狙って投げた時のように横へ倒れ込む訳でもなく―――まして、ミストが僕へ何らかの魔法詠唱の方法を教えてくれた時のように一時的とはいえ時間が止まった訳でもなく―――魔法の詠唱をしたというのに目立った変化がないのだ。 ただ、ひとつを除いて―――。 ふいに【コカトリス】の目線が穴があくほどに睨みつけられたせいで身動きが取れなくなっているライムスから別の方向へ向く。 それは、ハーピーと色とりどりの鳥達が枝にとまっている大樹のある方向だった。 急に獲物であるライムスの方から別の方向へ目線が向いた事に何となく違和感を抱いた僕は慌てて【コカトリス】が今まさに向いている方向―――大樹付近へと目線を向ける。 その隙に引田が素早く―――けれども【コカトリス】に気付かれないよう身動きの取れなくなっていたライムスの方へと駆け寄り彼を救出するのだった。

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