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石の沼と【コカトリス】⑧

「△△З$$&αΧΩΩ」 深呼吸をして気持ちを落ちつかせてから僕はもう一度―――ミストから教わった詠唱を唱える。 力を込めて握る杖先が白く光り、そのまま黒炎を纏い、相変わらず大樹の周りをウロチョロと駆け回っているトカゲにソックリな生き物に気を取られている【コカトリス】の全身を白い光が包み込む。 【グッ……グェェェッ―――ゲェェェッ――!!】 杖から放たれた白い光に包まれ、そのまま動かなくなった【コカトリス】の悲鳴が石の沼一帯に響き渡り、徐々に全身が灰色の石に包まれていく。蛇の尾も、金色の鶏冠も――存在感を放っていた立派な金色竜の両翼も――段々と固い石に覆われていくのだ。 ―――こうして【コカトリス】の石像が出来た。 「その魔法―――低級呪詛返し魔法の《クヲ・テッド・モ・クヲ・スイセ》だな。ミストしか知り得ない筈だが――何故、お前がこの魔法を―――?」 「それは…………っ……!!?」 ふいに、サンが怪訝そうな表情を浮かべつつ石像と化した【コカトリス】を冷たい目で見上げながらも僕へと尋ねてくるのだった。 ―――サンの問いに答えようとしたものの、ふいに手の甲へと目線を移して、ある違和感を覚える。 僕の手の甲に、血のように真っ赤で歪んだ文体の《1》という数字が尚も浮かんでいるのだった。

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