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【ハーピーの世界】の異変と【コカトリス】④
ドサッ…………!!
完全に石像と化した引田が石の沼の上へと崩れ落ちる。幸いにも、その衝撃のせいで割れてしまう事はなかったが【世界】に起きた異変のせいで稲妻が光っているため―――いつ、雷が石像と化した引田へ当たるか見当もつかない。最悪の場合、その雷の衝撃のせいで割れてしまうかもしれないのだ。
「ひ、引田……引田……っ……!?」
「駄目だ……お前はヒキタに近づくなっ……それよりも、己の為すべき事をしろ!!何の為にミストがお前に術を託したと思っている!?早く詠唱を……っ……」
石像と化してしまった引田の全身を雷から庇うように覆いながらサンが僕へと厳しく言いはなったのも束の間―――今度はサンまでもが【コカトリスの伸縮自在の蛇の尾の牙】の餌食となってしまった。
みるみる内にサンの全身が石像と化していく。
その見るも無惨な仲間達の様子を目にいれつつも、僕の心の中には愚かにも―――ミストから託された最後の詠唱を唱える事に対する恐れと不安とがグチャグチャに入り交じった負の感情がドロドロと渦巻いてしまっているのだった。
(早く……早く、もう一度詠唱をしなくちゃ……でも、もしもさっきみたいに失敗したら――今度こそ取り返しのつかないことに………なる……っ……)
「……………」
「ま、誠……っ……!?」
と、その時だった―――。
誠が【コカトリス】の石化の攻撃と吹き荒れる風雨を何とかかいくぐり、僕の側までやってくると、無言ではあるが勇気づけるように優しく―――しかし、力強く歪んだ文体の数字が浮かびあがっている僕の手をギュウッと握ってきたのだった。
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