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【ハーピーの世界】の異変と【コカトリス】⑤
「ユウタさんっ―――サン様とご主人様が割れないように……私が守ります!!【コカトリス】の石化攻撃は体温のあるニンゲンや種族にしか効果がないんデス。私は攻撃はできないデスが、二人を雷から守る事なら出来ます。だから、ユウタさんは安心して――その変な鳥さんに攻撃をお見舞いしてやってくださいっ!!」
人型から本来のスライムの姿に戻ったライムスの元気のある声が僕の耳に入ってくる。
(そうか、ライムスはスライムだから―――体温という概念が存在しないんだ……っ……)
普段は仲間の中では、どちらかといえばマイペースで、かつトラブルメーカーの彼の声が―――とても心地よく僕の不安と恐怖で押し潰されそうになって余りの喜びに思わず涙を流してしまう。
――ピョン……
―――ピョン、ピョンッ……
兎のように軽々と自由に跳びはねながら石像と化してしまった引田とサンの元へと近寄ると、みるみる内に―――普段の何倍も大きくなったライムスが二人を守るように上から覆い被さる。
ピシャァァン――――ッ!!
ライムスの体に青い光を放つ雷が直撃する。
しかし、彼に守られているおかけで引田とサンの石像が壊れるような事はなく、ホッとしたのも束の間―――、
「優太―――、これから俺の言う通りにしろ。俺がコカトリスとやらをある場所に誘導する―――そしたら、お前はミストから教わった魔法を唱えるんだ。俺が頷いた瞬間に詠唱しろ。分かったな?」
「ま、誠…………でも、もしも――失敗したら……っ……」
ギュウッ…………
ふと、誠が力強く僕の手を握りしめてくれる。
「今のお前なら絶対に大丈夫だ……俺を……いや、俺らを信じろ。俺達は……仲間だろう?」
「う、うん……分かった。怖がっていても何も変わらないよね――僕、頑張るよ……っ……」
真面目な顔をして確信めいた言葉を言う誠の瞳をジッと見つめると、なおも不安で押し潰されそうになりつつも僕は覚悟を決めて、しっかりと頷くのだった。
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