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【滅びゆくハーピーの世界】と【無慈悲な王子様】①

▽ ▽ ▽ ▽ 【キューイ、キューイ…………ハーピーの大事なコカトリスしゃんが……コカトリスしゃんが……うっ、うっ、うわぁぁぁ~ん……っ……くっ……ひっ……く……】 仲間であった【コカトリス】の石像の欠片が以津真天の浮かぶ沼へと消え去るのを見ていた【ハーピー】の切なそうな悲鳴が大樹のてっぺんから聞こえてくる。 なぜか、この状況でさえ【ハーピー】は大樹のてっぺんから降りて来ようとはしないのだ。 そのハーピーの様子を見るに、残虐なだけの存在とは、どうしても思えない僕は慌てて泣いている彼女の元へと駆け寄ろうとしたのだが―――、 【おっと……どこに行くのかな――優太くん?まさか、あそこで泣いている矮小な存在のハーピーに同情したから彼女を許す……なんて事はないよね?】 とても懐かしい声が僕の耳に入ってきたと同時に未だに大樹の下でウロチョロしていたトカゲのような奇妙な生物が、ミラージュの王子であり、僕ら一行にとっての敵である【チカ】へと姿を変える。 「チカ……な、なんで…………ここに!?」 【ん~……しいて言うなら、暇潰し……かな?部下である彼らの偵察……ともいえるかもね。まあ、それだけじゃないんだけど……というか、たった今……それだけじゃなくなったんだよ……優太くん?】 ――パチンッ!! そう答えながら【チカ】が___愉快げに振る舞いながらも穏やかな笑みを浮かべつつ軽やかに指を鳴らす。 ――――ゴォォォォッ――!! すると、たちまち大樹全体が黒炎に包まれて燃えていく。そんな異常事態でさえ【ハーピー】は大樹のてっぺんから降りて来ようとは―――しないのだ。 やがて、【ハーピー】を含めて色とりどりの鳥達の群集―――それに立派な大樹が完全にゴオゴオと燃える黒炎に包まれていき、あっという間に跡形もなく消え去ってしまう。 【ん~……やっぱりチャセックの呪いって凄いねぇ……こんな状況でもかけられた対象は抗う事すら出来ないなんて……ねえ、チャセックの呪いで大樹と一心同体になった……ハーピーちゃん。まあ呪いをかけたのはオレ……なんだけどね~………って、もう消し炭になっちゃったか】 ニコニコと穏やかな笑みを浮かべる【チカ】に恐怖を抱いてしまった僕は―――心の底から彼を殴りたいと思いつつ、情けなくも満足に動く事すら出来ないのだった。

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