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【滅びゆくハーピーの世界】と【無慈悲な王子様】②

―――バシッ――!! 怒りと悲しみに心が支配された僕が【チカ】の頬を叩く音が辺りに響く―――。 「知花、答えて……どうして……負けを認めて僕らに何もしなかった彼女にあんな酷い事をしたのか……今すぐに答えてっ……!!」 【ん~…………ハーピーとその部下であるコカトリスが君らに負けたから?ハーピーの作ったこの世界がオレの期待した程の出来じゃなかったから?いいや、おそらく違うねぇ……矮小な存在であるハーピーごときが、オレをミラージュの王の器ではない……そう言いはなったからなんじゃないかな~?】 【オレじゃなくてこの塔の主である虫けらみたいな小さい小さい男の方がミラージュの王に相応しいと認めてしまったからねぇ……それは万死に値するんだよ。まあ、でもさ…………じわりじわりと拷問にかけられて苦しんで消え去るよりも、一気にお仲間と共に焼けたんだから……彼女も幸せだったんじゃないのかな?】 穏やかな笑みを保ったまま―――【チカ】は平気で酷い言葉を口にする。 もはや、かつてダイイチキュウで一時的とはいえ共に時を過ごしたクラスメイトであり友達だった存在とは思えない程に残虐な彼の姿を見ながら―――僕は俯く事しか出来ない。 【さて、と…………わずかな暇潰しも出来たし、そろそろオレは想太君が待っている場所に帰ろうかな。と、その前に―――】 ―――グイッ!! かつての友達である【チカ】が俯いたまま佇む僕の手を力強く掴みながら己の体の方へと引き寄せ―――、 チュッ………… 僕の首筋にピリピリとした痛みが伴う程のキスをしてきたのだ。そして、あろう事か、そこに歯を立ててそのまま吸い付いてきた。 「…………や、やだっ……!!?」 ドンッ…………!! 反射的に【チカ】の体を思いきり突き飛ばしたのだが―――彼はそのまま【世界】の沼の中へ吸い込まれてしまうかのように姿を消してしまうのだった。 穏やかな笑みを浮かべながら―――。

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