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未だに暗い沼に沈む者②

―――真剣なミストの問いかけに、周りにいる皆の目線が僕へ突き刺さる。 「ど、どうするって―――その……彼はミラージュの王子様だし、助けるべきなんじゃ……っ……」 急に皆から鋭い目線だけで、未だに沼に沈んだままのシリカを助けるかどうかを問いかけられ、困惑しつつも少し遠慮がちに答えを出した。 「―――ミストがお前に聞いているのは、そういう事ではない。一国の王子だとかそういう立場や身分は別にして、我らがリスクをおかしてまで第二王子殿を救う価値があるかどうか……お前がそうまでして第二王子殿を救いたいかどうか……そういう事を聞いているんだ」 「…………サンの言う通りだよ。こういってはシリカ様に失礼だけれど、彼はミスト達に酷い事をした挙げ句―――敵の大元であるチカ様と血が繋がっている実の弟だ。正直に言ってしまうと……ミストは彼を信用しきれない。多分、サンもそうだと思う」 シリカが僕らにした酷いこと―――。 それは、おそらく―――王宮に来たばかりの頃に牢に入れられた時の事だろう。 しかし、このまま彼を見捨てたままでもいいのだろうか___? (いや……それだけはしちゃいけない……そんな事をしたら……彼と……知花と……同じになってしまうじゃないか……) バシャッ…………!! 「ユ、ユウタ…………!!?」 「ち、ちょっと……優太くん……って……木下誠まで……っ……!!?」 「まったく―――愚かな事を……っ……」 皆の慌てふためいた声を微かに聞きながらも、それを振り切るかのように―――僕は未だに暗い沼に沈んだままの哀れな少年を救うべく濁りきった水面へと飛び込んだのだった。

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