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~目を覚ました少年は沼の中で何を見るか~
▽▲▽▲▽▲
ゴボッ……
ゴボ、ゴポッ……コポッ…………
暗い暗い沼の中ーーー。
ふと、目を覚ましたシリカは余りに異常なその光景を目にして唖然とするしかなかった。
つい先程まで、実の兄であるチカから人質であるソウタと共に【永遠のお茶会】とかいう拷問まがいの事をされていたにも関わらずーーー何故、こんな濁りきった暗い水の中にいるのだろうか?
【永遠のお茶会】とはチカが好んでいる遊びで―――昔から彼が罪人や己に歯向かう下々の奴等や金持ちの好色爺の変態男達に対して行っていた拷問まがいのお仕置きの事だ。
お仕置きされる対象者は彼の気が済むまで、何度も何度も―――何度も繰り返し魔法で時間を巻き戻され、彼いわく単なるお茶だという得たいの知れないドロドロとした気持ち悪い液体を強制的に飲まされる。
(もしかして―――シリカが兄様の入れた謎のお茶を飲むのを拒んだから、こんなおぞましい場所に連れてこられたのかな――でも、それからの記憶が全くないよ……っ…………)
と、そこまで考えて―――シリカはハッと我にかえる。そんな事はどうでもいいから、早く此処から逃げなくてはと思い直したのだ。
チクッ…………
(い、痛い……な、何これ―――こんなの――シリカは、シリカは知らない……)
どうにかして水の中から出ようと、もがき始めたシリカの手首付近に鋭い痛みが走った。かつて幼い頃に口の先端がのようになっているチハッチューという生き物に刺された時のようなズキンとした痛みだったため、眉をしかめながらおそるおそる痛みが走った手首の方へと目線を向けようとしたのだが―――、
手首あたりの様子を目にする前に飛び込んできたのは―――二つの鋭い銀色の牙が、己に襲いかかってくるというシリカにとって衝撃的な光景だった。
そして、シリカは再び目を瞑り気絶してしまうのだった―――。
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