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一行に襲いかかるは――大海蛇⑧

―――ベチャッ!! ふと、引田が足元で浮いている以津真天の死骸へ《ネコンヤマンのタマ》を投げ付ける。 「《グゲンカ魔法》により対象をキィーナ虫へ――それと同時に対象へ《チャーム魔法》をかけず―――イジー・ワ・ルーナを召喚させるな!!」 『―――魔法には二つ種類がある。ひとつめは杖を使って詠唱しながら行う方法だが――兄ちゃんみてえな生粋のミラージュの住人じゃねえ《ダイイチキュウ人》には使えねえ。だから、ふたつめの方法の言霊による魔法の使い方を教えてやるよ。いいか、こうやるんだ―――』 あの時、村に来た怪しげな風体の行商人は何がそんなに嬉しいのかニヤニヤと笑いながら引田へと耳打ちしてきた。 《言霊》の魔法により―――《ネコンヤマンのタマ》の能力を発動させる方法。 それは、魔法をかけようとしている対象へ《ネコンヤマンのタマ》を投げつけ、己の望みとまるっきり逆の言葉を言うのだ。 ちなみに、《イージ・ワ・ルーナ》とは怪しげな風体の行商人が言うには言霊精霊の一種らしく、言霊魔法を唱える者の声の質や性格――なによりも内面に秘めている覚悟の大きさによって、それぞれ姿形を変えているらしい。 それはともかく、引田は怪しげな風体の行商人から教えて貰った通りに――《言霊による魔法》を唱えて《ネコンヤマンのタマ》の能力を発動させた。 すると、願いどおりに以津真天の死骸がみるみる内にキィーナ虫の幼虫とやらに姿を変えていく。変化している最中だから、ミストいわく耐えきれない程にキンキンと喧しい鳴き声こそ聞こえてはこないものの―――その外見はかなりグロテスクといってもよい。 ダイイチキュウにいた頃のカブト虫の幼虫に近い姿をしているものの、よくよく見てみるとネバネバとした緑色の粘液が全身にまとわりついている。まるで、かつて映画で見たエイリアンの幼体のような姿なのだ。 ―――と、ここで引田は愚かにも今まで忘れていた重要な事に気付いて、みるみる内に血の気がひいていく。 虫が―――特にウネウネとした動きをする虫が大の苦手だという事をすっかり失念していたのだった。

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