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我が儘王子は孤独を嫌う①
▽ ▽ ▽ ▽
「シリカ様…………いい加減、この狂った【世界】から出ましょうよ。ほら、シリカ様の大好きなチュッパチャプロスをあげますから…………ね?シリカ様……昔からこのお菓子が大好きでしたからね。大丈夫、今は……これを食べただけで怒鳴りつけるような怖ーい大人はいませんよ?」
「…………やだっ!!シリカはここから一歩も動かないもん。シリカがペットにしようとしてた大ガエルさんが戻ってくるまで…………ここから動かない……っ…………!!」
―――沼の真ん中辺りで、ミストが優しく笑顔を浮かべながら涙ぐむシリカを必死でなだめている。
僕らが共に力を合わせてシリカという少年を救ってから暫く過ぎたが、未だに【崩壊しきったハーピーの世界】から脱出できずにいた。
それというのも―――シリカが大海蛇と共に凍らされ、爆発魔法によって粉々にされて沈んでしまった場所に呆然と立ち尽くして喚き続けているからなのだ。その部分は、ミストが放った氷魔法のせいでツルツルに凍結している。そのため、一時的に固まってはいるものの、いつ――また砕けてしまうか分からない不安定な場所だ。
先程の戦いで疲労が蓄積され、早く此処から出たいという思いを抱いている引田やサンや誠は呆れた表情を浮かべながら我が儘を言い続けるシリカを見つめている。
疲労は溜まっているものの、喚き続けるシリカにどういう態度で接しればいいのか分からない僕とライムスはオロオロするばかりだ。
しかし、ミストだけは違った―――。
いつ割れてしまってもおかしくない凍った水面を慎重な足取りで渡っていき、まるで兄が弟をなだめるような優しい――それでいて僅かに強い口調でシリカをなだめるのだった。
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