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我が儘王子は孤独を嫌う②

「シリカ…………シリカはまた……ひとりぼっち……大ガエルさんまでいなくなって……シンまでいなくなって……う、うっ…………ひっく……!?」 「――――いい加減にしろ……!!」 何とかミストが泣きじゃくっている少年の機嫌をとろうと必死になっていた時、今まで眉間に皺を寄せながら無言でシリカを睨んでいたサンの怒りの声が響き渡る。 「ち、ちょっと……サン……そんな言い方は……っ……」 「第二王子殿…………そんなだから誰しもが貴方から離れていくんです。確かに大ガエルを犠牲にした罪は我等の責任ですが……そうまでして貴方様を救ってくれた彼らに……感謝するのが礼儀だ。分かりましたか?」 ミストの言葉を聞いて我にかえったサンが、なるべく冷静な口調でシリカを叱りつけるが、オロオロしっぱなしの僕の目で見ても明らかに彼の顔が困惑と悲しみに支配されて先程よりも更に歪んでいくのが分かる。 やはり、シリカはまだ成長途中の単なる子供でしかないのだ。たとえ、それが一国の第二王子だという立場だとしても―――彼は己の感情に振り回されやすい子供でしかないのだ。 「うっ、う…………うわぁぁぁ~ん!!」 冷静さを取り戻したサンの説得も虚しく――深い悲しみと困惑とに支配され、一際おおきくなったシリカの喚き声と泣き声とが混じり合いながら辺りに響く。 まるで、歌声と様々な楽器の音とが混じり合う【狂騒曲】のように。 それから暫くたった時の事ーーー。 ハーピーとシーサーペントを倒してからは所々凍ったままとはいえ【世界】に来たばかりの頃の状態に戻った沼に新たなる異変が起こっているという事に、僕らはようやく気付き始めるのだった。

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