414 / 713

我が儘王子は孤独を嫌う③

ハーピーが消え去った事で【世界】全体に強烈に吹き荒れていた風雨や雷は収まっていた筈だ。しかし、シリカがサンによって叱られた事により、沼の水は大きな波がたち、桃色の宝石のような綺麗な月が出ていた夜空には再び灰色の雲に覆われ、ハーピーの手下達が繰り出してきたような脅威的なものではないものの―――あまりにも唐突な事態に対する驚きを露にして呆然と立ち尽くしている優太達に風雨が襲いかかる。 しかも異変は【世界】だけではなく、喧しく泣き喚き続ける少年ーーーシリカにまで起こったのだ。 ―――みるみる内に、シリカが水色のトカゲの姿に変化していく。 よく見てみると、空から振り続ける雨がシリカを覆うように膜を作っていく。まるで、彼を守るように雨の膜が覆い尽くす。 「―――く、くそ……っ……!!」 すると、忌々しげに呟いてから何故かサンが動揺したような表情を浮かつつも、慌ててトカゲに変化していくシリカの方へと物凄いスピードで近付き―――、 「第二王子殿…………っ……ル……カ様は……いませんから。それだけは……おやめ……下さい……っ……」 それだけを囁くような声で言ってから、意外な事に雨の膜で完全に覆われる直前の半分トカゲと化したシリカの小さな体を―――優しく抱き締めたのだ。 そして、シリカは本来の姿へと戻り……孤独を嫌う幼い第二王子は、これから僕らと一緒に行動してもいいというのなら、この【世界】から出ると約束するのだった。

ともだちにシェアしよう!