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~新たな仲間を加えた一行は【世界】から搭へと戻る~
▽ ▽ ▽ ▽
「…………ミラージュの王族が生まれつき持つ特有の能力?それって…………っ……」
「そうだ、第一王子であるチカ様にも……彼の父である先代王にも……そして今、お前達が見た通り……第二王子殿にもそれがある。元々、王族の血には膨大な魔力があるのだ……因みに第二王子殿の持っている能力は―――」
《死屍涙々狂騒曲》―――。
それが、ミラージュの第二王子であるシリカが生まれつき持っている能力の名前なのだそうだ。
その能力は、他人が想像もつかない程にシリカが深い悲しみと怒り――そして罪悪感に囚われ、受け止めきれなくなった時に発動するという。上記に加え、シリカが水辺にいる事と―――彼が涙を流して泣いている時でないと発動しないようだ。
また、それが発動すると辺りに嵐が吹き荒れるだけではなく、周りに死体や死骸がある場合は―――それらを蘇らせてから更には凶暴化させて敵味方関係なく襲ってしまうという危険な能力だそうで沼に大海蛇の死骸が沈んでいる状況だったので慌ててサンが止めにいったらしい。
おそらく、大ガエルを失った深い悲しみと―――大ガエルの命を奪った僕らに対する深い怒りと―――そして、己が命を救ってやれなかったという罪悪感に囚われてしまったから発動してしまったのだろう、と神妙な顔付きでサンが教えてくれたのだ。
「…………昔から王宮に仕えているミストさえシリカ様の血の能力の事は知らなかったのに―――ミストよりも後にやって来たサンが知ってるなんて、ちょっと……いや、かなり意外なんだけど。いつ、そんな事を知ったの?」
「………………」
―――ミストが不思議そうに尋ねてきた途端、サンはピタリと口を閉ざしてしまう。
「あのさ、それはそうとして……いつまで此処にいるわけ?シリカくんとやらは無事だったんだから早く出ようよ?ほら、あっちに……出口らしき亀裂があるから」
そんな気まずさに耐えきれないと言わんばかりに、今まで黙っていた引田が燃えてしまった大樹の方を指差しつつ―――なんとなくだが、すねたような口調で僕らへと言ってくるのだった。
すっかり燃えてしまった大樹の幹に――微かに縦に引き裂かれてしまったかのよつな亀裂があるのが分かる。
その亀裂は最初は小さなものだったが、好奇心旺盛かつマイペースなライムスが恐怖心や不信感など微塵も抱いていない様子でピョンピョンと近付いた途端に大きく広がっていき―――やがてライムスだけではなく、新たに仲間として加えたシリカ共々、僕ら一行をあっという間に吸い込んでいくのだった。
――ドサッ!!!
そして、あまりにもあっという間の出来事に呆然としていた僕らが気付いた時には―――スーツ姿の男とその仲間が支配している塔へと戻ってきたのだ。
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