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そして、彼は一行の目の前で姿を消す①

▽ ▽ ▽ ▽ 「―――それで、あの娘が消えた場所にこれが落ちていた、と―――お前はそう言いたいのか!?」 「う、うん…………とりあえず、どうしたらいいのか分からなくて……ここに入れてきたんだけど……っ…………」 美々がフラフラとした足取りで白いモヤモヤしたものと共に、何処かへと消え去ってしまった後で、僕は彼女の辿ってきた場所に点々と何かが落ちている事に気が付いて―――何故かは分からないが、ほとんど疑問に思う事なく、自然とそれらを拾っていた。 「わ~……なにこれ!?こんなもの、初めて見たよ……それにしても、色んな色があって、とっても綺麗。ほら、特にこれ!!」 ミストが僅かに興奮している様子で目を輝かせながら示したもの―――それは、ダイイチキュウで存在していた、おはじきやビー玉だ。 「シリカはね、これ……これがいい!!何だか美味しそうな甘い香りがする……それに、これも色んな色があるよ。なんか、見た目がミストの持っているのと似ているような気がする―――」 すっかり元気を取り戻したシリカが示したものは―――ダイイチキュウで存在していた駄菓子というやつで、表面にザラメがついている大きくて丸い桃色やレモン色や水色をした宝石のようなアメや、四角い形をしたフルーツ味のお餅のような食感が特徴的なもの等だ。 因みにミストが持っているものはランタンの光に照らされてキラキラと輝きを放っているビー玉だった。シリカはザラメがついている宝石のような大きなアメとビー玉が似ていると感じたらしい。 「ね、ねえ……優太くん、それに木下誠……あれって……前の世界にあった駄菓子とか……ビー玉やおはじきだよね?なんで、あんな物が……?それに、なんだか……変だ……これってさ――昔使ってたようなクレヨンだよ……っ……」 と、ふいに―――引田が僕が拾ってきた中に入っていた何色かのクレヨンにおもむろに手を伸ばした。 すると、信じられないことに引田がクレヨンへと手を伸ばした瞬間―――彼は瞬く間に其処から姿を消してしまう。 まるで、神隠しのように僕らが見ている正に目の前で忽然と姿を消してしまうのだった―――。

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