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そして、彼は一行の目の前で姿を消す②
「ひ、引田…………引田……っ……!!?」
と、慌てふためく僕は―――ある事に気が付いてしまい唖然としながら周りを見渡す。
神隠しのように一瞬で僕と誠の目の前から消え去ってしまったのは―――引田だけではなかった。
―――興味深そうにビー玉やおはじきを手にとり、見とれていたミストも、周りにザラメがついた宝石のようなアメ玉を口にして嬉しそうに微笑んでいたシリカとライムス……それに、そんな彼らを必死で止めようとしていたサンでさえ―――いつの間にか僕と誠の目の前から靄のように消えていたのだ。
「ど、どうして……僕と誠以外の皆が、急に…忽然と消えちゃったの……っ……!!?」
「少し……試してみたい事がある。優太、お前もこっちに来てくれ!!」
「う、うん…………分かったよ……誠……」
神隠しのように己と誠以外の仲間が、唐突に消えてしまった訳も分からずに困惑しつつも何故か確信めいた口調で僕に言ってきた誠の方へと近付いていく。
すると、誠は―――おもむろに床に落ちたクレヨンへと左手を伸ばし、それを拾いあげるのだった。
※ ※ ※ ※
次に気が付いた時には、僕は誠と共に見覚えのない場所にいた。
―――床には、い草の香りがする畳がびっしりと埋め尽くされており、僕と誠が座っている両脇にある窓からは眩しいくらいの夕陽が差し込んでいる。
―――目の前には、茶色のちゃぶ台とその上に置かれたお盆の中にはシリカとライムスが嬉しそうに頬張ったザラメのついた宝石のようなアメ玉やその他にも駄菓子が入っている。
ザザザー……
ザ……ザザー……
僕と誠の耳に聞いた事があるような、ないような微妙に不快な音が入ってきた。
「ま、誠―――あれってさ、白黒テレビ……だよね?」
「ああ、ダイイチキュウにいた頃に……社会科の授業の教科書に載っていたものに……ソックリだ……っ……」
―――呆然とするしかない僕と誠を嘲笑うかのように、茶色のちゃぶ台の奥に置かれている白黒テレビはノイズを発している。画面はいわゆる砂嵐状態で、ずっと見ているとおかしくなってしまいそうな程にチカチカしているのだ。
すると、急に―――今まで砂嵐状態だった白黒テレビの画面に何かが映る。
それは、顔面蒼白になりながら必死でテレビ画面を両腕で叩いているミストの姿なのだった。
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